手に塗りこめてあるが、ベッド・カヴァーのあやしげな汚染《しみ》にも、壁にニジリつけた煙草の焼けあとにも、隠そうにも隠せない自堕落な生活のあとが、そのままに残っている。
「お会いしたいけど、ここじゃ、困るわ」
 八重は、気やすくうなずいて、
「あたしの部屋でよかったら、お使いなさい。ご案内しておくわ。すぐ来るわね」
 そう言うと、スリッパを鳴らしながら階下へ降りて行った。
 八重の部屋になっている庭に向いた六畳へ行くと、八重と笑いながら話していた、あどけないくらいのひとが、居なりにこちらへ振り返って、大きな目でサト子を見た。
「想像していたとおりの方だったわ」
 八重が、名残りおしそうに立って行くと、暁子は、サト子が坐るのも待たずに、
「あたくし、暁子……どんなにお目にかかりたかったかしれないの」
 と、甘えるような口調で、言った。
「ごめんなさい。知らなかったもんだから」
「そんなこと、なんでもないわ。あたくしの家、木挽町……歩いたって十五分よ。お会いできるまで、いくどでも来るつもりでしたの」
「そういうことだったら、ちょっと書き置いていってくださればよかった」
 暁子は、首をかしげて
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