とまらないみたい」
「あたし、どうせ、おしゃべりよ……あれは、日本画か、お茶のお稽古《けいこ》をしているひとなのね……パアッとした色目の友禅の着物に、木型《きがた》にはめたような白足袋をキチンとはいて、ごめんください、なんて言いながら、すらすらはいってくるの……昭和のはじめごろのような、時代な着付なんだけど、それが、なんともいえないほどシックなの……あまり、すばらしいんで、キャッと言っちゃったわ」
「そんなお嬢さま、おちかづきがなかったわ。なんとおっしゃる方?」
「久慈って言っていたわ」
 久慈暁子というのは、鎌倉の警察へおしかけて行って、偽証までして愛一郎を庇ったという、あの突飛な娘だった。愛一郎や中村から聞いて、ようすは知っているが、どう考えても、縁のなさそうなひとが、なんのつもりで、そうもしげしげと訪ねて来るのか、サト子には理解できなかった。
「サト子さん、やさしいみたいだけど、こわいところもあるのね……おねがい、会ってあげて……追い帰したりしちゃ、かあいそうよ。いいでしょ、ここへお連れするわね」
「ちょっと待って」
 いぜん、この部屋に住んでいた女たちの落書のあとは、ペンキで上
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