て、お八重さんというアパートの差配の娘が、ドアの隙間から幅の広い顔をのぞかせた。
「あら、居たのね……サト子さん、あのお嬢さま、また、いらしたわ」
一年ほどのあいだに、六度も勤めを変えたといっている。ぶよぶよした、しまりのない感じで、二十五にもなっているというのに、子供のような舌っ足らずなものの言いかたをする。
「お嬢さまって、どこのお嬢さま?」
八重は、あらァと顎をひいて、
「うちのパパの助《すけ》、じゃ、お話ししなかったのね……あなたに会いたいと言って、きれいなお嬢さまが、この一週間ほど、一日置きくらいに訪ねていらしたの」
「聞いていなかった……それで、いま?」
「玄関で、しょんぼりしているわ」
ドアにつかまって、クニャクニャと身体をくねらせながら、
「あんたって、部屋にいたためしがないんですもの。あたし、すっかり同情しちゃったわ……二十歳ぐらいかな。生れてから、いちどもパーマなんかかけたことのないような、クセのない髪をサラッとおさげにして、ひと掛け三千円もするような『ランヴァン』のレースのリボンを、頭のうえでチョンと結んでいるというスタイル……」
「あなた、しゃべりだすと、
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