海から吹きつける強い風が、ガタピシと窓をゆすぶる。昼すぎから暴風雨になるだろうと、ラジオで言っていた。風が変ったらしく、工場のサイレンや、ポンポン蒸気の排気管や、可動橋の定時の信号や、汽艇の警笛《シッフル》や、さまざまな物音が、欄間《らんま》の回転窓の隙間から雑然と流れこんでくる。
約束は二時だから、急ぐことはないが、そんなことより、神月に会いに行くということを含めて、いっこうに気乗りがしない、知らない国に出かけて行って、お祖父さんに会ってくるのも悪くないが、カオルがすすめるから、その気になったまでのことで、強く望んでいるわけではない。
この夏の終りごろまでは、サト子は、後さがりばかりしているような、無気力な女ではなかった。生きてゆくことに希望をもち、斬新な生活の方法を考えだして実行するという、張りのある世渡りをし、一日一日を満足して生きていたものだが、このごろ、心の支えがなくなったようで、すこしこみいったことになるとすぐ、どうでもいいと投げだしてしまう。
あまりひどい貧乏では困るが、見た目におかしくなければ、着るものなんかどうだっていい。食べてみたいというようなものもない。腹が
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