ふさがる程度に食べられれば、それで結構といったぐあいで、どうしたいというような欲望は、ぜんぜんなくなった。
「二十四だというのに、これはまたひどく枯れきったもんだわ」
 サト子自身も、おかしいと思っている。こんなことばかりしていると、カオルが言ったように、意地の悪い、ひねくれたオールド・メードのようになってしまうのだろう。
 越中島の白い煙突、黒い煙突からたちのぼる煙が、空から吹き落され、黒い靄のように掘割の水のうえを這っている。サト子は、そろそろ荒れかけてきた、さわがしい風景をながめながら、あのころ、あんなに張切っていたのはなんのせいだったろうと、しんみりと思いかえしてみた。
 そんなサト子にも、どきっとするような思い出がないわけではない。
 青梅の奥で、キャベツ、蕪《かぶ》、トマト、胡瓜など、日本人向きの清浄野菜をつくっている坂田という青年が、中野の市場まで荷を出しに行った帰り、サト子が離屋を借りている植木屋の門の前で牛車をとめ、自動車がクラークションを鳴らすように、牛の首を叩いて、モーと啼《な》かせる。芯まで焼けとおったような黒い顔を、汗だらけにしてはいってきて、サト子の部屋の縁
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