、たくさんでしょう。有江というひとが来て、うるさい話になって、結局は、カラ騒ぎだったというようなところへ落着くのでしょうが、その間、あっちこっちからこづかれて、嫌な思いをしなくちゃならないのよ……あたしなら、どこかへ逃げだしちゃう。日本から離れて、あまり遠くないところへ行って、幕になるのを待ってるわ」
 カオルは、うっとりとしているサト子の腕に手をかけると、眠りから呼びさまそうとするように、強くゆすぶった。
「しっかりなさいよ」
「だいじょうぶ……眠ってなんかいないわ」
「サト子さん、あなた神経衰弱《ノイローゼ》よ」
「そうかもしれないわ」
「むかしの元気、どうしたの。オールド・メードがしぼんだみたいな顔をしているわ」
「そんな顔、している?」
「あなたみたいに、馬鹿正直に貧乏と取っ組むひともないもんだわ。もうすこし、暢気《のんき》におやんなさいよ。いい折だから、二ヵ月ほど、外国へでも行ってきたらどうなの」
 あてどのない話をするものだ。サト子は、無理な笑顔をつくりながら、いいかげんに調子をあわせた。
「日本にいてさえ、満足に暮せないというのに、どうして外国へなんか……でも、そんなうま
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