大矢シヅが、流し場で泣いている。なにか言ってやりたかったが、マゴマゴしているうちに、カオルに廊下へおしだされてしまった。
さまざまな意匠
サト子の部屋へ行くと、カオルは手套《マフ》をベッドのうえになげだして、グッタリと向きあう椅子にかけた。
「頭の悪い連中の相手になっていると、芯が疲れるわ」
サト子は、調子をあわせるように、曖昧にうなずいてみせた。
「なかなか、たいしたもんだったわ」
カオルは、だるそうにテーブルに肱をつきながら、
「ひとごとみたいに言うわね。あなたのお祖父さんの財産の問題なのよ」
と、つきはなすように言った。
サト子が知っているかぎりでは、お祖父さんの財産といえば、いま叔母が住んでいる鎌倉の別荘と、恵那の谷の奥にある、先祖伝来のわずかばかりの土地だけだ。
「飯島の家はともかく、恵那にある土地ってのは、付知川べりのひどい荒地で、水の涸《か》れた磧《かわら》のつづきに、河原|撫子《なでしこ》が咲いている写真を見たことがあったわ。あんなもの、財産なんていうのかしら」
カオルは、いっこうに気のないようすで、
「このごろ、東北や九州でウラニウムが出て、そのへ
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