うがいちょう》の、もと宮さまのお邸《やしき》に住んでいるわ」
「笄町の邸というと、公園のような庭のついた御殿のことでしょう? あれがウィルソンの巣だぐらいのことは、あたしたちも知っていますわ」
「知っているなら、早く行って、つかまえなさいよ、どこかへ飛んで行ってしまうかもしれないから」
 曽根は、手先でシナをしながら、
「よく、ごぞんじのくせに、あなたもひとが悪いわ……あの家は、横浜税関の差押物件《さしおさえぶっけん》になったのを、ヤマさんのご尊父さま……といっちゃいけないかな……ウィルソンの顧問弁護士の山岸さんが、異議の申立をして、事件の審理がすむまで、そちらの管理になっているんだそうですわ。中村さんや、税関の連中が、出たりはいったりしているだけで、ウィルソンなんてえものは、とうのむかしに、あそこに住んじゃいないんです」
 いままで黙りこんでいた、ずんぐりしたほうの女が、だしぬけに、ものを言った。
「おシヅに、ジャッキーの居どころを吐かせようと思うんだが、秘《ひ》しかくして、どうしても言いやがらねえんです」
 サト子は、そっとシヅのほうを見た。シヅは依怙地な表情を顔にためたまま、眼も
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