首の女に、命令するような調子で言った。
「水上さん、ごぞんじないそうよ。あんた、わかるように話してあげて」
猪首のが、りきみかえったようすで、どもり、どもり、言った。
「そこにいる水上さんとこへ、何億という財産がころげこんで……そうしたら、水上さんの叔母テキだの、山岸という弁護士だの、坂田とかいうアメリカくずれだの、それから、秋川という大金持だの、その息子だの、欲の皮のつっぱったやつらが、総がかりになって、ひったくりにかかったので、水上さんは切《せつ》なくなって、おシヅのところへ逃げこんできて、おシヅとウィルソンに、身柄は任せるからよろしくたのむと、委任状を渡したんだって……あたしの聞いたところじゃ、それが、ウラニウム籤のモトになる話なんです」
曽根は、目カドを皺めながら、
「水上さん、おわかりになったでしょう」
と言いながら、サト子の顔をのぞきこむようにした。
いま、じぶんを中心にして、目に見えぬ気流のようなものが渦を巻いているような感じがする。それは、愛一郎が飯島の久慈という家に忍びこんだことにも、叔母の熱海行きにも、山岸芳夫との結婚をおしつけられたことにも、大矢シヅが今日
前へ
次へ
全278ページ中176ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
久生 十蘭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング