をおした。
シヅは、興奮して青くなって、小刻みにふるえながら、通りにむいた窓のそばに立って、イライラと指の爪を噛んでいる。これから、ここではじまる、みじめな光景を眼にえがくと、シヅを見捨てて、出て行く気にはなれない。
「でも、あたし、こまるわ」
サト子が渋ると、カオルはうす笑って、
「あなたがいたって、どうにもなりはしないでしょう。放っておけばいいのよ。このひとたち、こんなところで、大きな顔でジタバタできるわけはないんだから」
戸口の壁に凭《もた》れて、陰気な眼つきをしていたのが、うしろ手に隠していた喧嘩用の砂袋《サンド・バッグ》を右手に持ちかえると、のっそりとカオルのほうへ寄って行った。
「おれたちに、どうして喧嘩ができねえんです?」
カオルは、顔をしかめながら、
「あなたたちの話ってのは、どうせ、闇ドルのことでしょ? むこうの河岸っぷちに、横浜税関の車がとまっているわ。あんたたち、お伴つきで来たわけなのね。お望みなら、窓をあけてあげるから、言いたいことを、精いっぱいどなってみるといいわ」
砂袋《サンド・バッグ》を持ったのが、ひととき、くすんだようにだまりこんでいたが、その
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