、半商売というわけか」
 肩ごしに、うしろに振り返ると、
「おシヅ、お客さんだ……どこかのご令嬢さまが、お前に、ご用だとおっしゃる」
 道をあけて、お辞儀をしながら、
「お通り遊ばせ……失礼さんですが、あんたさんも、お仲間さんですか」
 女たちの肩をおしのけるようにして、山岸カオルがはいってきた。
「あなたの部屋をノックしてみたら、お留守だったから、たぶん、ここだと思って……」
 シヅには目もくれず、サト子にそう言いながら、壁ぎわに積みあげた椅子やテーブルを見ると、ここではじまることを察したらしく、痩立《やせだ》ちのみえる頬のあたりに、人の悪い微笑をうかべた。
「お取りこみのようね……お邪魔だったかしら」
 この夏の終りに、鎌倉の秋川の家で会ったときは、頭のなかの乱れが見えるチグハグな印象をうけたが、きょうは、目のなかにしっとりした情味がつき、風が落ちて海が凪《な》いだような、しずかな顔をしていた。
 黒と白だけの着付で、ネットのついたトーク型の帽子の小さな菫《すみれ》の花束が、ただひとつの色彩になっている。カオルは、ハンド・バッグのかわりにもなる、豹の皮の手套《マフ》から右手をぬきだ
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