これに板を渡して溝を越えて庭前に運び出す、これは平生からの訓練であった、その通りにやって呉れました。それでその翌日私が行って見るとそこに高く積み上げてある。そこには避難民がやってきて、きれいな紙は持って行って使用する、火のたきつけに用いる、雑巾の代りに用いる、次第に消え失せつつある。所が今のフランネルのような布で包んである梵本は焚くと臭いから火を焚くには用いない。雨にさらされている梵本をすっかり集めて選び分けて調べると、七百三十部あったのが六百八十部くらい残っている。紛失したのは一割に足らない。殆ど全部残っているといって宜しい。それで非常に私は喜びまして、書物が無くなったら辞職しようといっていたのをとうとう停年まで生き延びるようになったのであります。
六
イギリスはインドの南方仏教小乗の一切経を出版しております。ロシアでは大乗一切経の梵語の原本を出版しております。これは帝政時代から出版しておりましたが赤化ロシアになっても今も続いて出版しております。赤化ロシアの方が他の国よりもよほど理解があるといって梵語学者の仲間では賞讃しております。シャムの皇帝は曽て小乗の一切
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