せるまゝ法句と稱へたり。

   内容一般

 法句の内容は各章の題號にても察せらるゝが如く、佛教の立脚地より日常道徳の規準を教へたるもの、社會は生活苦、病苦、老苦、相愛別離の苦、仇敵會合の苦、乃至は死苦に惱まされ、さいなまる、如何にして是等の苦惱を永久に脱し得べきか、如何にして絶待安穩なる涅槃に達し得べきか、換言せば、世人は事物の眞相に通ぜず、妄念、謬見、貪愛、※[#「りっしんべん+喬」、第3水準1−84−61]慢等の心の病の爲に苦しめられ、不明にして執著し、違背し、日夜擾惱を増す、智慧の眼を開いて妄念に打克てば身心ともに安靜なることを得、終に涅槃の状態に達す、此の意味を教ゆるが佛教の目的なり、法句經の所詮なり、修養の龜鑑とし、道業の警策として、座右に備へ朝夕披讀し、拳々服膺せば、精神の向上發展、動作の方正勤勉、處世の要術、何れの方面にも良藥たらざる無し。

   製作者と年代

 法句經は全部頌文より成る、古代佛教の聖典たる律や經の中に散在せる金玉の名句を集めたるもの所謂る教訓句集(didactic stanzas)とか、華句集(anthology)とかと稱すべきものにて、作者は勿
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