著を超えたる比丘は已度暴流者と謂はる。
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初の「五」は有身見、疑、戒禁取、欲貪、瞋恚の五は欲界即ち感覺の旺盛なる下界を順益する結なれば五順下分結と云ふ、次の「五」は色貪、無色貪、掉擧、慢、無明の五は色と無色との界即ち上界を順益する結なれば五順上分結と名づく、次の「五」は信、勤、念、定、慧の五は善法の生ずる根本なれば五根と名づく、後の「五」は、貪、瞋、癡、慢、見の五にして能く執著するものなれば五著と名づく。
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三七一 比丘よ、靜慮せよ、放逸なる勿れ、汝の心を妙欲に住《とど》めざれ、放逸にして(熱)鐵丸を呑む勿れ、燒かるゝ時に至りて、是苦なりと叫ぶ勿れ。
三七二 慧なき人に靜慮なし、靜慮せざる人に慧なし、靜慮と慧とある人は已に涅槃に近づけり。
三七三 空屋に入り心寂靜なる比丘は、正しく法を觀じて人中に無き樂を享く。
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空屋に入り云々―或る靜處に於て業處(入定の豫備位)より進んで定を得て其の作意を以て坐する時を指す。
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三七四 人苟も蘊の生滅を思惟することあらば不死を證得せし人の喜樂を得ん。
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蘊―因縁力 由つて積集せるもの。
不死―涅槃。
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三七五 現世に於ける聰慧ある比丘の初とは謂《いは》く、感官を護り、滿足し、道徳の規律を擁護し、生活正しく、善友を侶とするにあり。
三七六 施與を常とし、所行に於て善巧に、是に由て悦豫多く、苦を盡す。
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施與を常とし―財法二施を怠らざるを云ふ。
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三七七 衞師迦が萎める華を振ふが如く是の如く諸の比丘は貪と瞋とを離れよ。
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衞師迦―素馨屬の植物の名。
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三七八 身寂、語寂、寂にして能く定を得、已に世の財利を吐きたる比丘は寂靜者と謂はる。
三七九 自ら誡しめ、己を檢し、熟慮し、己を護る比丘は安樂に住せん。
三八〇 己を以て主とし、己を以て歸とす、故に己を制せよ、商侶が良馬を(制する)如く。
三八一 喜悦多く佛教に淨信ある比丘は變化の止息せる寂靜の樂處に到るべし。
三八二 比丘あり年少なりと雖も佛法に於て精勤なれば、彼は此の世を照らす、雲を出たる月の如し。
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第二十六 婆羅門の部
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婆羅門―婆羅門は古代印度にて社會の第一位に居り、宗教、哲學等の指導者として崇められ、社會中の最も偉き人、神に近き人と認められたり、佛教にては此語は罪惡を排除せる義と解し阿羅漢と云ふと同じ義とし、往々にして佛陀と同義に用ゐらる。
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三八三 勇敢に流を截れ、欲を除け、婆羅門よ、變化の滅盡を知り了りて汝は無作を知る、婆羅門よ。
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流―渇愛を喩ふ。
婆羅門―漏盡者《けがれなきひと》を指す、但しこの頌文は因に果名を與へたるなり。
無作―涅槃。
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三八四 婆羅門あり、若し二法の彼岸に達しぬれば此の智者の一切の繋縛は滅盡す。
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二法―靜止と觀察とを云ふ。
彼岸―完全の域。
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三八五 彼岸も非彼岸も彼岸非彼岸もなき無畏無繋縛の人を我は婆羅門と謂ふ。
三八六 靜慮し、離貪し、堅住し、已に所作を作し、心の穢なく、最上義を獲得せる人を我は婆羅門と謂ふ。
三八七 日は晝に照り、月は夜を照らし、兵は甲を※[#「てへん+鐶のつくり」、第3水準1−85−3]して照り、婆羅門は靜慮して照り、佛は威光を以て一切迷妄の闇を照らす。
三八八 諸惡を去るが故に婆羅門なり、寂靜行のゆゑに沙門と謂はる、己の垢を除遣せるが故に出家と謂はる。
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文中「去る」「寂靜」「除遣」は次の如く婆羅門、沙門、出家と音相似たるを以て斯く言へり。
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三八九 婆羅門を打たざれ、(打たれたる)婆羅門は(打ちたる人に)向はざれ、いかで婆羅門を打たんや、況やいかで(打ちたる)人に向はんや。
三九〇 所愛に對して心を抑止するは是れ婆羅門の少なからざる勝事なり、傷害の意輟むに應じてそれだけの苦即ち滅す。
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所愛に對して云々―父母佛陀等の所愛に對して忿の心を抑止するなり。
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三九一 身と語と意にて惡を造らずして(此の)三處を護る人を我は婆羅門と謂ふ。
三九二 若し正等覺者所説の法を説示するものあらば、人は彼を恭しく禮すべし、婆羅門が火天を(禮するが)如くに。
三九三 婆羅門は結髮に由るに非ず、族に由るに非ず、姓に由るに非ず、若し實と法とを有すれば彼は淨婆羅門なり。
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