げ]
結髮―印度に行はれる苦行者の一種。
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三九四 癡人よ、結髮汝に何かあらん、鹿皮衣汝に何かあらん、汝内に稠林あり(て)外を飾る。

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鹿皮衣―印度苦行者の被るもの。
稠林―邪見を稠林に喩ふ。
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三九五 糞掃衣を被、羸痩し、筋脈露顯し、獨り林中に處して靜慮する人を我は婆羅門と謂ふ。
三九六 姓に由り、母の族に由り、我は婆羅門と謂はず、彼は貴族と稱すべし、彼は實に富者なり、無所有無取なる人を我は婆羅門と謂ふ。
三九七 人あり一切の結を斷ち、決して憂※[#「戚/心」、第4水準2−12−68]せず、著《ぢやく》を去り繋を離れたるを我は婆羅門と謂ふ。
三九八 紐と、帶と、繩と其の附屬とを斷ち、障壁を毀ち、覺悟せる人を我は婆羅門と謂ふ。

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紐―結ぶ性ある忿に喩ふ。
帶―縛る性ある愛に喩ふ。
繩と其の附屬―六十二の謬れる見識に喩ふ。
障壁―無明に喩ふ。
覺悟―四諦の理を悟るを云ふ。
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三九九 惡を作さざるに、罵詈、打擲、又は繋縛を忍受し、忍力を具し、其力にて能く耐ゆる人を我は婆羅門と謂ふ。
四〇〇 忿なく、禁を守り、戒を持し、欲なく、調御して最後身なる人を我は婆羅門と謂ふ。

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禁―頭陀即ち少欲知足の人の行儀。
戒―四清淨戒(別解脱律儀、身と語との不善を作さざるを誓ふこと、根律儀、感覺を制御すること、正命清淨律儀、生活法を節制すること、依縁律儀、生活需要品を節制すること)
欲―渇愛。
調御―六根を制御すること。
最後身―次後の生存を受くべき煩惱無きこと。
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四〇一 藕葉《はすは》の上の水の如く、針端の芥子の如く、欲に染らざる人を我は婆羅門と謂ふ。


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藕葉の上の水―染らざるに喩ふ。
針端の芥子―住|著《ぢやく》せざるに喩ふ。
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四〇二 人あり現世に於てすら己の苦の盡を遍知し、重擔を下し、繋を離るれば、我は彼を婆羅門と謂ふ。
四〇三 甚深の慧を具し、聰明に、道非道に通達し、最上義を得たる人を我は婆羅門と謂ふ。

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最上義―阿羅漢性を云ふ。
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四〇四 在家も無家も兩《ふたつ》ながら交らず、定住處なく、少欲なる人を我は婆羅門と謂ふ。
四〇五 若し人群生の弱きと強きとに拘らず其の中に居て刀杖を捨て(自ら)殺さず、又他をして殺さしめざれば、彼を我は婆羅門と謂ふ。
四〇六 爭の中に處して爭はず、暴き中に處して慍らず、有取の中に處して無取なる人を我は婆羅門と謂ふ。

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有取―精神と肉體とに於て自我を認むるを云ふ。
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四〇七 若し人あり貪と瞋と慢と覆《ふ》を離るゝこと芥子が針端より(落つるが如くなるときは)、彼を我は婆羅門と謂ふ。

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覆《ふ》―他人の善や、自分の不善を隱覆すること。
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四〇八 ※[#「鹿/(鹿+鹿)」、第3水準1−94−76]ならざる教訓する實語を發し、其の語に由りて誰をも怒らさざる人を我は婆羅門と謂ふ。
四〇九 人若し此の世に於て或は短、或は長、※[#「鹿/(鹿+鹿)」、第3水準1−94−76]細、淨不淨(を問はず)、與へられざる物を取らざれば、彼を我は婆羅門と謂ふ。
四一〇 人若し今世又は後世を希はず、希望なく、束縛を離るれば、彼を我は婆羅門と謂ふ。
四一一 人若し愛著なく、(諦理を)知つて疑なく、甘露の源底に達すれば、彼を我は婆羅門と謂ふ。

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甘露―涅槃を云ふ。
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四一二 人若し此の世に於て福と罪と兩《ふたつ》ながら執するを息め、憂なく、貪を離れ、清淨なれば彼を我は婆羅門と謂ふ。
四一三 月の翳《くも》り無く、淨く澄み、明なる如く、變化的生存の愛已に盡きたる人を我は婆羅門と謂ふ。
四一四 人若し此の敵と險道と輪廻と癡を越え、已に渡り、彼岸に達し、靜慮し、欲なく、疑なく、所取なく、安穩なれば、彼を我は婆羅門と謂ふ。

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敵―貪等を指す。
險道―煩惱。
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四一五 人若し現世に於て諸欲を斷ち、家を捨てて遍歴し、欲の存在を盡せば、彼を我は婆羅門と謂ふ。
四一六 人若し現世に於て愛を斷ち、家を捨てて遍歴し、愛の存在を盡せば、彼を我は婆羅門と謂ふ。
四一七 人の軛を斷ち、神の軛を超え、一切軛の束縛を離るれば、彼を我は婆羅門と謂ふ。

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神の軛―軛は或種の煩惱を云ふ、人や神を役使し自在ならざらしむればなり、「神」とは變化的生存者中の一類のものを指す、即ち人間を超出せ
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