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住宅―生死界。
住處―生死界。
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九二 若し人蓄積する所なく、受用度あり、(心)空、無相、解脱に遊ぶときは、其人の行跡は尋ぬべきこと難し、猶ほ虚空に於ける鳥の跡の如し。
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行跡尋ぬべきこと難し―已に變化的存在なる迷界を出で涅槃界に入れるを云ふ。
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九三 若し人心の穢を盡し、飮食を樂著せず、(心)空、無相、解脱に遊ぶときは、其人の行跡は尋ぬべきこと難し、猶ほ虚空に於ける鳥の(跡の)如し。
九四 若し人感官を制し、御者に善く馴らされたる馬の如くし、貢慢を斷ち、心の穢を盡せば、諸神すら、斯かる如なる人を羨む。
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如なる人―佛の羅漢弟子を指す。
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九五 如なる人は地の如く爭はず、閾の如く能く愼しみ、淤泥なき池の如し、如なる人に輪廻なし。
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地の如く爭はず―世の毀嗤貶黜を甘受するを云ふ。
閾の如く愼しみ―俗に所謂踐みつけられても身口に怒を發せざるなり。
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九六 意寂靜、語も業も亦寂靜なる如なる人は、正智にて解脱し、安穩を得たる人なり。
九七[#「九七」は底本では「六七」] (餘の)信を離れ、無作を證し、(續生の)結を斷ち、誘惑を斥ぞけ、希望を棄てたる人こそ眞の最上士なれ。
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無作―涅槃の異名。
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九八 村落に於ても、將た林中に於ても、平野に於ても、高原に於ても、阿羅漢の住する處は樂しからざるなし。
九九 林は愛樂すべし、これ俗人の好まざる所、離欲の人は此を樂しむ、彼等は愛欲を求めざるが故なり。
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第八 千の部
一〇〇 無益の句より成る一千言よりも、聞きて安穩を得る一の益ある句を勝れたりとす。
一〇一 無益の句より成る一千偈よりも、聞きて安穩を得る一の偈文を優れたりとす。
一〇二 無益の句より成る百偈を誦むも、聞きて安穩を得る一法句を(誦むに)如かず。
一〇三 戰場に於て千々の敵に克つよりも、一の己に克つ人こそ實に戰士中の最上と云ふべけれ。
一〇四 己に克つを勝れたりとす、他の諸人に克つに非ず、自己を從へ、所行常に節制ある人の勝利には
一〇五 神も健闥婆も亦魔羅も及び梵も、斯かる人の勝利には反抗する能はず。
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