七七 教授せよ教誡せよ、不應爲の事を避けよ、彼は善人の愛する所にして不善人の愛せざる所なり。
 七八 惡友に伴なはざれ、下劣の人を侶とせざれ、善友に伴なへ、上士を侶とせよ。
 七九 法(水)を飮める者は快よく眠り、心淨く、(斯かる)賢人は常に聖所説の法を樂しむ。
 八〇 疏水師は水を導びき、矢人《やつくり》は箭を調へ、木工は木を調へ、智者は己を調ふ。
 八一 磐石は風に搖がざるが如く、賢人は毀《そし》りと譽れの中に於て動かず。
 八二 深き淵は澄みて靜なるが如く、智者は道を聞きて安泰なり。
 八三 善士は一切を棄て、欲を貪らず、愁嘆せず、樂に會うても又苦に會うても汲々たらず又戚々たらず。
 八四 (善士は)己の爲にも亦他の爲にも、子孫を希はざれ、財も、又土地も、不法に由りて己の繁榮を希はざれ、彼は善く聰く正しくあれ。
 八五 多くの人の中に於て少數の人あり彼岸に達す、餘の人は此方の岸の上に彷徨す。

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彼岸―涅槃。
此方の岸―輪廻界。
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 八六 正しく説かれたる法あるとき其法を遵行する人のみ彼岸に到る、死の境域は越ゆること甚だ難し。

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死の境域―輪廻の郷。
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 八七 智者は黒法を離れて白(法)を修すべし、在家より非家に趣き、悦び難き孤獨を

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黒・白―次頌の如く惡・善の異名。
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 八八 樂ふべし、智者は諸の欲を去り、一物をも所有せず、己を淨めて諸の煩惱を除くべし。
 八九 心は正しき菩提《さとり》の要素を正しく修習し、執著無く、執著を棄つることを樂しみ、心の穢を盡し、知見を具する人は、現世に於て(已《すで》に)涅槃に入れるなり。
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    第七 阿羅漢の部

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阿羅漢―應供と譯す、人の尊敬を受くべき資格ある義、又は殺賊の義、煩惱の賊を已に殺したるを云ふ。
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 九〇 經べき途を已に過ぎ、憂を除き、一切に於て解脱し、一切の縛を斷てる人には苦惱あることなし。

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經べき道―有爲の輪廻を指す。
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 九一 彼等は精勤し、熟慮して住宅を喜ばず、鵝の小池を棄つるが如く、彼等はあらゆる住處を棄つ。

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