私が信ずるとは、どんなことか、なぜ、そんなことをするのであるか、それにはどんな效能があるか、と云ふ樣な色々の點があります。先づ其效能を第一に申せば、此信ずると云ふことには、私の煩悶苦惱が拂ひ去らるゝ效能がある。或は之を救濟的效能と申しませうか。兎に角、私が種々の刺戟やら事情やらの爲に、煩悶苦惱する場合に、此信念が心に現はれ來る時は、私は忽ちにして安樂と平穩とを得る樣になる。其模樣はどうかと云へば、私の信念が現はれ來る時は、其信念が心一ぱいになりて、他の妄想妄念の立ち場を失はしむることである。如何なる刺戟や事情が侵して來ても、信念が現在して居る時には、其刺戟や事情が、ちつとも煩悶苦惱を惹起することを得ないのである。私の如き感じ易きもの、特に病氣にて感情が過敏になりて居るものは、此信念と云ふものがなかつたならば、非常なる煩悶苦惱を免れぬことゝ思はれる。健康な人にても苦惱の多き人には、是非此信念が必要であると思ふ。私が宗教的にありがたいと申すことがあるが、其は信念の爲に、此の如く現實に煩悶苦惱が拂い去らるゝのよろこびを申すのである。
 第二 なぜ、そんな如來を信ずると云ふ樣なことを、す
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