帰ってくる。おっかあは、早く死んでしまって、いない。石太郎は、ポンツク(川漁《かわりょう》)にばかりいく。とってきたふなや、どじょうを、じいさんにたべさせる。また、買いにいけば、どじょうやうなぎを売ってくれるということである。
 石太郎の着物は、いつ洗ったとも知れず、あかでまっ黒になっている。その着物に、家の中のあの貧乏《びんぼう》のにおいや、ポンツクのなまぐさいにおいをつけて、学校へやってくる。そのうえ、注文されなくてもかれは、ときおり放屁《ほうひ》する。
 みんなは、石太郎のことを、屁《へ》えこき虫としてとりあつかっている。石太郎のほうでも、そのほうがむしろ気楽なのか、一どもふんがいしたことはない。生徒ばかりでなく、たいていの先生まで、石太郎を虫にしているので、石太郎は、だんだんじぶんでも虫になっていった。かれは、教室で、いちばんうしろに、ひとりでふたり分のつくえをあたえられていたが、授業中にあまり授業に注意しなかった。たいていは、ナイフで鉛筆に細工《さいく》していた。またかれは、まじめになるときがなくなってしまった。屁の注文をうける場合のほかは。かれは、いつもぐにゃぐにゃし、えへ
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