ているうちに天から子どもをさずかるようなことなら、世の中に法律はいらないことになる」
と、むずかしいりくつをいいました。
 けれど、和太郎さんは負けていないで、こういうのでした。
 「世の中は、りくつどおりにゃいかねえよ。いろいろふしぎなことがあるもんさ」
 さて、この天からさずかった子どもの和助君は、それからだんだん大きくなり、小学校では、わたしと同級で、和助君はいつも級長、わたしはいつもびりのほうでしたが、小学校がすむと、和助君は、和太郎さんのあとをついで、りっぱな牛飼いになりました。そして、いまでは和太郎さんは、だいぶんおじいさんになりましたが、まだ元気です。おかあさんとよぼよぼ牛は、一昨年なくなりました。



底本:「牛をつないだ椿の木」角川文庫、角川書店
   1968(昭和43)年2月20日初版発行
   1996(平成8)年6月20日34版発行
入力:山田芳美
校正:林 幸雄
2001年4月9日公開
青空文庫作成ファイル:
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