童話における物語性の喪失
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)辞《ことわ》って
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)×名|位《くらい》が
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放送局がラジオ小説を募集するとき次のような条件をつける。一、三十分で完結するもの。一、登場人物は×名|位《くらい》が好都合である。一、明朗健全にして、国民性をよく発揚しているものたること。そしてこれは辞《ことわ》ってはないが、芸術的にすぐれた作品でなければならぬことは勿論《もちろん》である。これらの諸条件を聞かされると、人は、それに一々|適《かな》った作品を書くことはいかにむつかしいかを思うのである。昔からよい作品は霊感によって生まれるといわれている。霊感は、また「閃《ひらめ》く」という述語をいつも従えている。して見るとそれは稲妻のようなもの、我々のままにならぬものなのである。かかる性格の霊感にこれらの条件を押しつけるのは、稲妻に向って、「火《ひ》の見櫓《みやぐら》を伝って下りて来て、豆腐屋の角を右に折れて、学校道に出て、崖《がけ》の下に牛がいたら、崖上の細道を通って、そして私の家まで来
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