でもよかった。兵太郎君は帰ってきたのだ。
休けい時間に、兵太郎君が運動場へはだしでとび出していくのをまどから見たとき、久助君は、しみじみこの世はなつかしいと思った。そして、めったなことでは死なない人間の生命というものが、ほんとうにとうとく、美しく思われた。
そこへもうひとつ思い出すことがあった。それは、きょ年の夏、兵太郎君と川あそびにいって、川からあがったばかりの、ぴかぴか光るおたがいのはだかんぼうを、おいしげった夏草の上でぶつけあい、くるいあって、たがいに際限《さいげん》もなくわらいころげたことだった。
底本:「牛をつないだ椿の木」角川文庫、角川書店
1968(昭和43)年2月20日初版発行
1974(昭和49)年1月30日12版発行
入力:もりみつじゅんじ
校正:ゆうこ
2000年1月27日公開
2006年1月28日修正
青空文庫作成ファイル:
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