》に晴れています。どこまでも澄《す》んでいます。
 赤とんぼは、窓《まど》に羽《はね》を休めて、書生さんのお話に耳をかたむけています、かあいいおじょうちゃんと同じように。
「それからね、そのとんぼは、怒《おこ》って大|蜘蛛《ぐも》のやつにくいかかりました。くいつかれた大|蜘蛛《ぐも》は、痛《いた》い! 痛《いた》い! 助けてくれってね、大声にさけんだのですよ。すると、出て来たわ、出て来たわ、小さな蜘蛛《くも》が、雲のように出て来ました。けれども、とんぼは、もともと強いんですから、片端《かたはし》から蜘蛛《くも》にくいついて、とうとう一|匹《ぴき》残《のこ》らず殺《ころ》してしまいました。ホッとしてそのとんぼが、自分の姿《すがた》を見ると、これはまあどうでしょう、蜘蛛《くも》の血が、まっかについてるじゃありませんか。さあ大変だって、とんぼは、泉へ飛んで行って、からだを洗《あら》いました。が、赤い血はちっともとれません。で、神様にお願《ねが》いしてみると、お前は、罪《つみ》の無い蜘蛛《くも》をたくさん殺《ころ》したから、そのたたりでそんなになったんだと、叱《しか》られてしまいました。そのとんぼが今の赤とんぼなんですよ。だから、赤とんぼは良くないとんぼです。」
 書生《しょせい》さんのお話は終わりました。
 私《わたし》は、そんな酷《むご》い事をしたおぼえはないがと、赤とんぼが、首をひねって考えましたとき、おじょうちゃんが大声でさけびました。
「嘘《うそ》だ嘘《うそ》だ! 山田のお話は、みんな嘘《うそ》だよ。あんなかあいらしい赤とんぼが、そんな酷《むご》い事をするなんて、蜘蛛《くも》の赤血だなんて――みんな嘘《うそ》だよ。」
 赤とんぼは、真実《ほんとう》にうれしく思いました。
 例の書生さんは、顔をあかくして行ってしまいました。
 窓《まど》から離《はな》れて、赤とんぼは、おじょうちゃんの肩《かた》につかまりました。
「まア! あたしの赤とんぼ! かあいい赤とんぼ!」
 おじょうちゃんの瞳《ひとみ》は、黒く澄《す》んでいました。
 暑《あつ》かった夏は、いつの間にかすぎさってしまいました。
 朝顔《あさがお》は、垣根《かきね》にまきついたまま、しおれました。
 鈴虫《すずむし》が、涼《すず》しい声でなくようになりました。
 今日も、赤とんぼは、おじょうちゃんに会いにやっ
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