や書生《しょせい》さんもいっしょです。
赤とんぼは、今日も空をまわっています。
夕陽《ゆうひ》が、その羽《はね》をいっそう赤くしています。
[#ここから1字下げ]
「とんぼとんぼ
赤とんぼ
すすきの中は
あぶないよ」
[#ここで字下げ終わり]
あどけない声で、こんな歌をうたっているのが、聞こえて来ました。
赤とんぼは、あのおじょうちゃんだろうと思って、そのまま、声のする方へ飛んで行きました。
思った通り、うたってるのは、あのおじょうちゃんでした。
おじょうちゃんは、庭で行水《ぎょうずい》をしながら、一人うたってたのです。
赤とんぼが、頭の上へ来ると、おじょうちゃんは、持ってたおもちゃの金魚をにぎったまま、
「あたしの赤とんぼ!」とさけんで、両手を高くさし上げました。
赤とんぼは、とても愉快《ゆかい》です。
書生《しょせい》さんが、シャボンを持ってやって来ました。
「おじょうさん、背中《せなか》を洗《あら》いましょうか?」
「いや――」
「だって――」
「いや! いや! お母さんでなくっちゃ――」
「困《こま》ったおじょうさん。」
書生《しょせい》さんは、頭をかきながら歩き出しましたが、朝顔の葉にとまって、ふたりの話をきいてる赤とんぼを見つけると、右手を大きくグルーッと一回まわしました。
妙《みょう》な事をするな――と思って、赤とんぼはその指先を見ていました。
つづけて、グルグルと書生さんは右手をまわします。そして、だんだん、その円を小さくして赤とんぼに近づいて来ます。
赤とんぼは、大きな眼《め》をギョロギョロ動かして、書生さんの指先をみつめています。
だんだん、円は小さく近く、そして早くまわって来ます。
赤とんぼは、眼《め》まいをしてしまいました。
つぎの瞬間《しゅんかん》、赤とんぼは、書生《しょせい》さんの大きな指にはさまれていました。
「おじょうさん、赤とんぼをつかまえましたよ。あげましょうか?」
「ばか! あたしの赤とんぼをつかまえたりなんかして――山田のばか!」
おじょうちゃんは、口をとがらして、湯《ゆ》を書生さんにぶっ[#「ぶっ」に傍点]かけました。
書生さんは、赤とんぼをはなして逃《に》げて行きました。
赤とんぼは、ホッとして空へ飛び上がりました。良いおじょうちゃんだな、と思いながら――
空は真青《まっさお
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