団長にあやまりました。見物人はかえって、やんやとはしゃぎさわいでよろこびました。団長は舞台のうしろで、にがわらいをしていました。
四
小さなサーカスは、村むらをねっしんにうってまわりましたが、みいりはほんの、みんなが、かつかつたべていけるだけの、わずかなものでした。
そのうちに、一とうの馬が病気で死んでしまいました。「おしいことをしたなあ」と、団長をはじめ、留《とめ》じいさんもお千代《ちよ》さんも、正坊《しょうぼう》も五郎も、馬の死がいをとりまいてなげきました。
それからひと月もたったある朝、目をさましてみると、団長とお千代さんと、正坊の三人きりをのこして、ほかの軽業師《かるわざし》は、みんな小屋をにげ出していました。これではいよいよ、興行《こうぎょう》することができなくなりました。団長もしかたなく、わかれわかれになることに話をきめました。
クロはおりにいれられたまま、車にゆられて、町の動物園に売られていきました。
正坊とお千代さんは、のこった一とうの馬と、テントやテーブルやいすなぞを売りはらって、できたお金をもらいました。
「団長さんはなんにもなくなって、
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