仔牛
新美南吉

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)なの花|畑《ばたけ》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)なの花|畑《ばたけ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)羽でも なく、鹿の[#「なく、鹿の」は底本では「なく、 鹿の」]
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 仔牛が ある 日 お父さん牛と お母さん牛の ところへ いつて、
「父ちやん 母ちやん、あたい 體の 中が むぢゆむぢゆすんの。」と いひました。お父さん牛も お母さん牛も すつかり よろこんで よだれを たらしました。そして お母さん牛が いひました。
「坊や その むづむづするのはね、今に 坊やの 體から 何かゞ 生えて くるのよ、さあ それでは、あの 丘の 南の なの花|畑《ばたけ》の 中へ はいつて、ぢつと すはつて ゐなさい、何か 生えて くるまで 待つて ゐなさいね。」と いひきかせて、仔牛を 一人きり 送つて やりました。
 仔牛が いつて しまふと お母さん牛は むねを おどらせながら お父さん牛に いひました。
「ね、あの 仔は 世界中で 一番 美しい 仔
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