牛だから、今に きつと 肩の 下から、いつか ほら 丘の ふもとで 池の 上に うかんでた あの 白鳥のやうな 美しい 白い 羽が 二つ 生えますよ。」けれど お父さん牛は 大きな 顏を 横に ふりました。
「なにを 馬鹿な。けものに 羽など 生えるもんか。けものに 生える ものは 角に きまつてる。だが あれは、なかなか 勇ましい やつだ。だから きつと 鹿の 角みたいに りつぱな、枝の ある 角が できるだらう。」
「おゝ いやだ、あんな みつともない もの。あんな いやな ものが あの かはいゝ 仔に 生える ものですか。きつと 羽が 生えます。もし あの 仔に 羽が 生えないなら わたし、この しつぽを あげても よろしいわ。」
「そんな へんてこな しつぽなんか いらないよ、繩つきれの 方が よつぽど ましだ。お前が さう いふなら わしは かう いふ。もし あれに 鹿の 角が 生えないなら、わしは わしの ひづめを やらう。」すると お母さん牛は 大きな 顏を できるだけ しかめて、
「そんな ひづめより 道ばたに おつこつて ゐる お椀の かけらの 方が ましですわ。」と
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