》れなれしい感じのする人だ。松次郎は去年も来て知っていたが木之助は始めてなので妙な気がした。
ちょっと休めよなどと友達にでもいうように心安くいってくれたのはこの人だけである。木之助はぼけんとつったっていた。五銭はくれないのか知らん。胡弓が下手《まず》いのかな。
「こっちの子供は去年も来たような気がするが、こっちの(と木之助を見て)小さい方は今年《ことし》はじめてだな」
木之助は小さく見られるのが癪《しゃく》だったので解《わか》らないようにちょっと背伸びした。
「お前たちは何処《どこ》から来たんだ」
松次郎が自分たちの村の名を言った。
「そうか、今朝《けさ》たって来たのか」
「ああ」
「昼飯、たべたか」
「まだだ」と松次郎が一人で喋舌《しゃべ》った。「弁当持っとるけんど、食べるとこがねえもん」
「じゃ、ここで食べていけよ、うまいものをやるから」
松次郎はもぞもぞした。五銭はいつくれるのか知らんと木之助は思った。
二人がまだどっちとも決めずにいるうちに、主人は一人できめてしまって、じゃちょっと待っておれよ、といって奥へ姿を消した。
やがて奥から、色の白い、眼の細い、意地《いじ》
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