狐
新美南吉
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)私《わたし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)しだ[#「しだ」に傍点]の一ぱいしげった
−−
一
月夜に七人の子供が歩いておりました。
大きい子供も小さい子供もまじっておりました。
月は、上から照らしておりました。子供たちの影は短かく地《じ》べたにうつりました。
子供たちはじぶんじぶんの影を見て、ずいぶん大頭で、足が短いなあと思いました。
そこで、おかしくなって、笑い出す子もありました。あまりかっこうがよくないので二、三歩はしって見る子もありました。
こんな月夜には、子供たちは何か夢みたいなことを考えがちでありました。
子供たちは小さい村から、半里ばかりはなれた本郷《ほんごう》へ、夜のお祭を見にゆくところでした。
切通しをのぼると、かそかな春の夜風にのって、ひゅうひゃらりゃりゃと笛の音《ね》が聞えて来ました。
子供たちの足はしぜんにはやくなりました。
すると一人の子供がおくれてしまいました。
「文六《ぶんろく》ちゃん、早く来い」
とほかの子供
次へ
全15ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング