《おおおとこ》がとってきた大理石はつきてしまいました。塔《とう》の高さは宮殿《きゅうでん》のどの建物《たてもの》よりも高くなりました。それでも、王様は、それでよいとはおっしゃいませんでした。そこで、巨男《おおおとこ》はふたたび南方へ旅立ちました。長い鎖《くさり》をひきずって、白鳥をつれ、巨男《おおおとこ》は広い広い沙漠《さばく》をくる日もくる日も歩いていきました。巨男《おおおとこ》は、また大きな大理石を三つもらって都《みやこ》に帰りました。すぐその日からつちとのみ[#「のみ」に傍点]をとってそれを切りはじめました。
 塔《とう》はますます高くなりましたよ。
 空がくもって星がみられない夜でも、巨男《おおおとこ》の灯《ひ》はたった一つの星のようにポツンとうかび出ていました。

 それは、すこし風のつよい宵《よい》でした。都《みやこ》の人びとは、窓《まど》から塔《とう》の上の灯《ひ》をあおいでみました。灯《ひ》は風のために、ゆらゆらゆれていました。人びとはそのとき、はじめて巨男《おおおとこ》がかわいそうになりました。王様も窓《まど》から顔をお出しになって、塔《とう》の上をみました。ごーごー
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