去年の木
新美南吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)枝《えだ》
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いっぽんの木と、いちわの小鳥とはたいへんなかよしでした。小鳥はいちんちその木の枝《えだ》で歌をうたい、木はいちんちじゅう小鳥の歌をきいていました。
けれど寒い冬がちかづいてきたので、小鳥は木からわかれてゆかねばなりませんでした。
「さよなら。また来年きて、歌をきかせてください。」
と木はいいました。
「え。それまで待っててね。」
と、小鳥はいって、南の方へとんでゆきました。
春がめぐってきました。野や森から、雪がきえていきました。
小鳥は、なかよしの去年《きょねん》の木のところへまたかえっていきました。
ところが、これはどうしたことでしょう。木はそこにありませんでした。根っこだけがのこっていました。
「ここに立ってた木は、どこへいったの。」
と小鳥は根っこにききました。
根っこは、
「きこりが斧《おの》でうちたおして、谷のほうへもっていっちゃったよ。」
といいました。
小鳥は谷のほうへとんでいきました。
谷の底《そこ》には大きな工場があって、木をきる音が、びィんびィん
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