、としていました。
 小鳥は工場の門の上にとまって、
「門さん、わたしのなかよしの木は、どうなったか知りませんか。」
とききました。
 門は、
「木なら、工場の中でこまかくきりきざまれて、マッチになってあっちの村へ売られていったよ。」
といいました。
 小鳥は村のほうへとんでいきました。
 ランプのそばに女の子がいました。
 そこで小鳥は、
「もしもし、マッチをごぞんじありませんか。」
とききました。
 すると女の子は、
「マッチはもえてしまいました。けれどマッチのともした火が、まだこのランプにともっています。」
といいました。
 小鳥は、ランプの火をじっとみつめておりました。
 それから、去年《きょねん》の歌をうたって火にきかせてやりました。火はゆらゆらとゆらめいて、こころからよろこんでいるようにみえました。
 歌をうたってしまうと、小鳥はまたじっとランプの火をみていました。それから、どこかへとんでいってしまいました。



底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書
   1988(昭和63)年7月8日第1刷発行
底本の親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書

前へ 次へ
全3ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング