生徒《がっこうせいと》などをかぞえあげました。これらの人《ひと》ののど[#「のど」に傍点]がちょうどしんたのむね[#「しんたのむね」に傍点]あたりで乾《かわ》かぬわけにはいきません。
「だで、道《みち》のわきに井戸《いど》があったら、どんなにかみんながたすかる。」
と、お母《かあ》さんは話《はなし》をむすびました。
 三十|円《えん》くらいで、その井戸《いど》が掘《ほ》れるということを、海蔵《かいぞう》さんが話《はな》しました。
「うちのような貧乏人《びんぼうにん》にゃ、三十|円《えん》といや大《たい》した金《かね》で眼《め》がまうが、利助《りすけ》さんとこのような成金《なりきん》にとっちゃ、三十|円《えん》ばかりは何《なん》でもあるまい。」
と、お母《かあ》さんはいいました。海蔵《かいぞう》さんは、せんだって利助《りすけ》さんが、山林《さんりん》でたいそうなお金《かね》を儲《もう》けたそうなときいたことをおもいだしました。
 ひと風呂《ふろ》あびてから、海蔵《かいぞう》さんは牛車曳《ぎゅうしゃひ》きの利助《りすけ》さんの家《いえ》へ出《で》かけました。
 うしろ山《やま》で、ほオほオ
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