まったと、あらためて痛切に感じるのであった。
そして、四人はしばらくないていたが、太郎左衛門は、ひろった貝がらで、足もとの砂の上にすじをひいているばかりで、なきださないのであった。
ないていない人のそばでないているのは、ぐあいのわるいものである。久助君はなきながら、ちょいちょい太郎左衛門の方を見て、太郎左衛門もいっしょになけばよいのにと、思った。こいつはなんというへんな、わけのわからんやつだろうと、またいつもの感を深くしたのである。
日がまったくぼっして、世界は青くなった。最初に、久助君のなみだがきれたので、なきやんだ。すると、加市君、兵太郎君、徳一君という、なきだしとはぎゃくの順で、せみが鳴きやむようになきやんでいった。
そのとき、太郎左衛門がこういった。
「ぼくの親せきが大野にあるからね、そこへいこう。そして電車で送ってもらおう」
どんな小さな希望にでもすがりつきたいときだったので、みんなはすぐ立ちあがった。しかし、それをいったのが、ほかならぬ太郎左衛門であることを思うと、みんなはまた、力がぬけるのをおぼえたのである。もしこれが、だれかほかのものがいったのなら、どんなにみ
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