ん》にもたれてとうもろこしをたべていた。私は林太郎にみられたと気づいた瞬間《しゅんかん》ぬすみの現行《げんこう》をおさえられたようにびくっとした。私はとっさのあいだにごまかそうとした。
だが、林太郎《りんたろう》は私の心の底までつまり私がツルをすいているということまでみとおしたようににやにやと笑《わら》って「まださがいとるのけ、ばかだな」といった。「あれ嘘《うそ》だっただよ、ツルあ何も埋《い》けやせんだっただ」
私は、ああそうだったのかと思った。心についていたものがのぞかれたように感じて、ほっとした。
それからのち、常夜燈《じょうやとう》の下は私にはなんの魅力《みりょく》もないものになってしまった。ときどきそこで遊んでいて、ここには何もかくされてはないのだと思うとしらじらしい気持ちになり、美しい花がかくされているのだと思いこんでいた以前のことをなつかしく思うのであった。
林太郎が私に真実《しんじつ》を語らなかったら、私にはいつまでも常夜燈《じょうやとう》の下のかくされた花の思いは楽しいものであったかどうか、それはわからない。
ツルとはその後、同じ村にいながら長いあいだ交渉《こ
前へ
次へ
全9ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング