ん》だ。」
「へえ、……錠前《じょうまえ》……屋《や》。」
「きさまもまだ根性《こんじょう》がかわっておらんッ。」
とかしらはどなりつけました。
「へえ、相《あい》すみません。」
「そういう村《むら》こそ、こっちのしょうばいになるじゃないかッ。倉《くら》があって、子供《こども》でもねじきれそうな錠《じょう》しかついておらんというほど、こっちのしょうばいに都合《つごう》のよいことがあるか。まぬけめが。もういっぺん、見《み》なおして来《こ》い。」
「なるほどね。こういう村《むら》こそしょうばいになるのですね。」
と海老之丞《えびのじょう》は、感心《かんしん》しながら、また村《むら》にはいっていきました。
次《つぎ》にかえって来《き》たのは、少年《しょうねん》の|角兵ヱ《かくべえ》でありました。|角兵ヱ《かくべえ》は、笛《ふえ》を吹《ふ》きながら来《き》たので、まだ藪《やぶ》の向《む》こうで姿《すがた》の見《み》えないうちから、わかりました。
「いつまで、ヒャラヒャラと鳴《な》らしておるのか。盗人《ぬすびと》はなるべく音《おと》をたてぬようにしておるものだ。」
とかしらは叱《しか》りました
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