《ろうじん》は笑《わら》いました。
「わしらはじつは盗人《ぬすびと》です。わしがかしらでこれらは弟子《でし》です。」
それをきくと老人《ろうじん》は眼《め》をまるくしました。
「いや、びっくりなさるのはごもっともです。わしはこんなことを白状《はくじょう》するつもりじゃありませんでした。しかし御老人《ごろうじん》が心《こころ》のよいお方《かた》で、わしらをまっとうな人間《にんげん》のように信《しん》じていて下《くだ》さるのを見《み》ては、わしはもう御老人《ごろうじん》をあざむいていることができなくなりました。」
そういって盗人《ぬすびと》のかしらは今《いま》までして来《き》たわるいことをみな白状《はくじょう》してしまいました。そしておしまいに、
「だが、これらは、昨日《きのう》わしの弟子《でし》になったばかりで、まだ何《なに》も悪《わる》いことはしておりません。お慈悲《じひ》で、どうぞ、これらだけは許《ゆる》してやって下《くだ》さい。」
といいました。
次《つぎ》の朝《あさ》、花《はな》のき村《むら》から、釜師《かまし》と錠前屋《じょうまえや》と大工《だいく》と|角兵ヱ獅子《かく
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