だいく》のあッしは、この鋸《のこぎり》で難《なん》なく切《き》れる家尻《やじり》を五つ見《み》て来《き》ましたし、|角兵ヱ《かくべえ》は|角兵ヱ《かくべえ》でまた、足駄《あしだ》ばきで跳《と》び越《こ》えられる塀《へい》を五つ見《み》て来《き》ました。かしら、おれたちはほめて頂《いただ》きとうございます。」
と鉋太郎《かんなたろう》が意気《いき》ごんでいいました。しかしかしらは、それに答《こた》えないで、
「わしはこの仔牛《こうし》をあずけられたのだ。ところが、いまだに、取《と》りに来《こ》ないので弱《よわ》っているところだ。すまねえが、おまえら、手《て》わけして、預《あず》けていった子供《こども》を探《さが》してくれねえか。」
「かしら、あずかった仔牛《こうし》をかえすのですか。」
と|釜右ヱ門《かまえもん》が、のみこめないような顔《かお》でいいました。
「そうだ。」
「盗人《ぬすびと》でもそんなことをするのでごぜえますか。」
「それにはわけがあるのだ。これだけはかえすのだ。」
「かしら、もっとしっかり盗人根性《ぬすっとこんじょう》になって下《くだ》せえよ。」
と鉋太郎《かんなたろう
前へ
次へ
全31ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
新美 南吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング