び》あるきの釜師《かまし》で、釜《かま》や茶釜《ちゃがま》をつくっていたのでありました。
「いいか、海老之丞《えびのじょう》。」
「へえ。」
と海老之丞《えびのじょう》が答《こた》えました。これは昨日《きのう》まで錠前屋《じょうまえや》で、家々《いえいえ》の倉《くら》や長持《ながもち》などの錠《じょう》をつくっていたのでありました。
「いいか|角兵ヱ《かくべえ》。」
「へえ。」
とまだ少年《しょうねん》の|角兵ヱ《かくべえ》が答《こた》えました。これは越後《えちご》から来《き》た|角兵ヱ獅子《かくべえじし》で、昨日《きのう》までは、家々《いえいえ》の閾《しきい》の外《そと》で、逆立《さかだ》ちしたり、とんぼがえりをうったりして、一|文《もん》二|文《もん》の銭《ぜに》を貰《もら》っていたのでありました。
「いいか鉋太郎《かんなたろう》。」
「へえ。」
と鉋太郎《かんなたろう》が答《こた》えました。これは、江戸《えど》から来《き》た大工《だいく》の息子《むすこ》で、昨日《きのう》までは諸国《しょこく》のお寺《てら》や神社《じんじゃ》の門《もん》などのつくりを見《み》て廻《まわ》り、大工《
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