した。
だが、子供《こども》たちの声《こえ》は、村《むら》の中《なか》へ消《き》えていってしまいました。草鞋《わらじ》の子供《こども》は帰《かえ》って来《き》ませんでした。村《むら》の上《うえ》にかかっていた月《つき》が、かがみ職人《しょくにん》の磨《みが》いたばかりの鏡《かがみ》のように、ひかりはじめました。あちらの森《もり》でふくろうが、二声《ふたこえ》ずつくぎって鳴《な》きはじめました。
仔牛《こうし》はお腹《なか》がすいて来《き》たのか、からだをかしらにすりよせました。
「だって、しようがねえよ。わしからは乳《ちち》は出《で》ねえよ。」
そういってかしらは、仔牛《こうし》のぶちの背中《せなか》をなでていました。まだ眼《め》から涙《なみだ》が出《で》ていました。
そこへ四|人《にん》の弟子《でし》がいっしょに帰《かえ》って来《き》ました。
三
「かしら、ただいま戻《もど》りました。おや、この仔牛《こうし》はどうしたのですか。ははア、やっぱりかしらはただの盗人《ぬすびと》じゃない。おれたちが村《むら》を探《さぐ》りにいっていたあいだに、もうひと仕事《しごと
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