《こ》が牛《うし》の仔《こ》をつれて立《た》っていました。顔《かお》だちの品《ひん》のいいところや、手足《てあし》の白《しろ》いところを見《み》ると、百姓《ひゃくしょう》の子供《こども》とは思《おも》われません。旦那衆《だんなしゅう》の坊《ぼ》っちゃんが、下男《げなん》について野《の》あそびに来《き》て、下男《げなん》にせがんで仔牛《こうし》を持《も》たせてもらったのかも知《し》れません。だがおかしいのは、遠《とお》くへでもいく人《ひと》のように、白《しろ》い小《ちい》さい足《あし》に、小《ちい》さい草鞋《わらじ》をはいていることでした。
「この牛《うし》、持《も》っていてね。」
 かしらが何《なに》もいわないさきに、子供《こども》はそういって、ついとそばに来《き》て、赤《あか》い手綱《たづな》をかしらの手《て》にあずけました。
 かしらはそこで、何《なに》かいおうとして口《くち》をもぐもぐやりましたが、まだいい出《だ》さないうちに子供《こども》は、あちらの子供《こども》たちのあとを追《お》って走《はし》っていってしまいました。あの子供《こども》たちの仲間《なかま》になるために、この草
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