》れない、と思《おも》って、あっしは見《み》とれていました。」
「へっ、面白《おもしろ》くもねえ。それで、その天井《てんじょう》をはずしてでも来《く》る気《き》かい。」
 鉋太郎《かんなたろう》は、じぶんが盗人《ぬすびと》の弟子《でし》であったことを思《おも》い出《だ》しました。盗人《ぬすびと》の弟子《でし》としては、あまり気《き》が利《き》かなかったことがわかり、鉋太郎《かんなたろう》はバツのわるい顔《かお》をしてうつむいてしまいました。
 そこで鉋太郎《かんなたろう》も、もういちどやりなおしに村《むら》にはいっていきました。
「やれやれだ。」
と、ひとりになったかしらは、草《くさ》の中《なか》へ仰向《あおむ》けにひっくりかえっていいました。
「盗人《ぬすびと》のかしらというのもあんがい楽《らく》なしょうばいではないて。」

       二

 とつぜん、
「ぬすとだッ。」
「ぬすとだッ。」
「そら、やっちまえッ。」
という、おおぜいの子供《こども》の声《こえ》がしました。子供《こども》の声《こえ》でも、こういうことを聞《き》いては、盗人《ぬすびと》としてびっくりしないわけにはいか
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