すびと》だ。そういう人《ひと》ごみの中《なか》では、人《ひと》のふところや袂《たもと》に気《き》をつけるものだ。とんまめが、もういっぺんきさまもやりなおして来《こ》い。その笛《ふえ》はここへ置《お》いていけ。」
 |角兵ヱ《かくべえ》は叱《しか》られて、笛《ふえ》を草《くさ》の中《なか》へおき、また村《むら》にはいっていきました。
 おしまいに帰《かえ》って来《き》たのは鉋太郎《かんなたろう》でした。
「きさまも、ろくなものは見《み》て来《こ》なかったろう。」
と、きかないさきから、かしらがいいました。
「いや、金持《かねも》ちがありました、金持《かねも》ちが。」
と鉋太郎《かんなたろう》は声《こえ》をはずませていいました。金持《かねも》ちときいて、かしらはにこにことしました。
「おお、金持《かねも》ちか。」
「金持《かねも》ちです、金持《かねも》ちです。すばらしいりっぱな家《いえ》でした。」
「うむ。」
「その座敷《ざしき》の天井《てんじょう》と来《き》たら、さつま杉《すぎ》の一枚板《いちまいいた》なんで、こんなのを見《み》たら、うちの親父《おやじ》はどんなに喜《よろこ》ぶかも知《し
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