なみ》の谷《たに》も鳴《な》るぞ。ほれ、あそこの村《むら》もここの村《むら》も鳴《な》るぞ。」
 ちょうどそのとき、ラジオのニュースで、きょうも我《わ》が荒鷲《あらわし》が敵《てき》の○○飛行場《ひこうじょう》を猛爆《もうばく》して多大《ただい》の戦果《せんか》を収《おさ》めたことを報《ほう》じた。
 僕《ぼく》の眼《め》には、爆撃機《ばくげきき》の腹《はら》から、ばらばらと落《お》ちてゆく黒《くろ》い爆弾《ばくだん》のすがたがうつった。
「ごんごろ鐘《がね》もあの爆弾《ばくだん》になるんだねえ。あの古《ふる》ぼけた鐘《かね》が、むくりむくりとした、ぴかぴかひかった、新《あたら》しい爆弾《ばくだん》になるんだね。」
と僕《ぼく》がいうと、休暇《きゅうか》で帰《かえ》って来《き》ている兄《にい》さんが、
「うん、そうだ。何《なん》でもそうだよ。古《ふる》いものはむくりむくりと新《あたら》しいものに生《う》まれかわって、はじめて活動《かつどう》するのだ。」
といった。兄《にい》さんはいつもむつかしいことをいうので、たいてい僕《ぼく》にはよくわからないのだが、この言葉《ことば》は半分《はんぶ
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