は、縁側にもどってきました。そしておばあさんに、
「おばあさん、かぶと虫とった。」
 と、見せました。
 縁側《えんがわ》にすわって、いねむりしていたおばあさんは、目をあいてかぶと虫を見ると、
「なんだ、がに[#「がに」に傍点]かや。」
 といって、また目をとじてしまいました。
「ちがう、かぶと虫だ。」
 と、小さい太郎は、口をとがらしていいましたが、おばあさんには、かぶと虫だろうががに[#「がに」に傍点]だろうが、かまわないらしく、ふんふん、むにゃむにゃといって、ふたたび目をひらこうとしませんでした。
 小さい太郎は、おばあさんのひざから糸切れをとって、かぶと虫のうしろの足をしばりました。そして、縁板《えんいた》の上を歩かせました。
 かぶと虫は、牛のようによちよちと歩きました。小さい太郎が糸のはしをおさえると、前へ進めなくて、カリカリと縁板をかきました。
 しばらくそんなことをしていましたが、小さい太郎はつまらなくなってきました。きっと、かぶと虫には、おもしろい遊び方があるのです。だれか、きっとそれを知っているのです。

         二

 そこで、小さい太郎は、大頭に麦わら
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