かをぺこんとへこませて、腰《こし》かけていました。
 そのとき克巳《かつみ》は、松吉の右手をなでていましたが、
「いぼって、どうするとできる? ぼくもほしいな。」
 と、わらいながらいいました。
「ひとつ、あげよか。」
 と、松吉はいいました。
「くれる?」
 と、克巳はびっくりして、目を大きくしました。
 松吉は、家の中から、箸《はし》を一本持ってきました。
「どこへほしい。」
「ここや。」
 克巳は信じないもののように、クックッわらいながら、左の二の腕《うで》を、うえぼうそう[#「うえぼうそう」に傍点]してもらうときのように出しました。
 松吉の右手の一つのいぼと、克巳の腕とに、箸がわたされました。
 松吉は、大まじめな顔をしました。そして、天のほうを見ながら、
「いぼ、いぼ、わたれ。
 いぼ、いぼ、わたれ。」
 と、よく意味のわかるじゅもんをとなえました。
 そのよく日、町の子の克巳《かつみ》は、なすや、きゅうりや、すいかを、どっさりおみやげにもらって、町の家に帰っていったのでした。

         二

 牛|部屋《べや》のかげで、さざんかが白くさくころに、松吉、杉作のうち
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