、おやしんけど、ただ大砲《たいほう》をうってみただけ。」
と、杉作はいいました。
松吉は、弟の気持ちが、手にとるようによくわかりました。弟も、じぶんのようにさびしいのです。
そこで松吉も、
「どかァん。」
と、一発、大砲をうちました。
すると松吉は、こんな気がしました――きょうのように、人にすっぽかされるというようなことは、これから先、いくらでもあるにちがいない。おれたちは、そんな悲しみになんべんあおうと、平気な顔で通りこしていけばいいんだ。
「どかァん。」
と、また杉作がうちました。
「どかァん。」
と、松吉はそれに応《おう》じました。
ふたりは、どかんどかんと大砲をぶっぱなしながら、だんだん心を明るくして、家の方へ帰っていきました。
底本:「童話集 ごんぎつね|最後の胡弓ひき ほか十四編」講談社文庫、講談社
1972(昭和47)年2月15日第1刷発行
1988(昭和63)年1月30日第30刷発行
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2005年6月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http
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