ま》りな仕打ですぞ」
春日は呆れたように相手の顔を見上げ、
「□□へ行く必要があるんですか?」
「必要があるか? 娘は今現在□□で悪い奴の、手で苦しめられて逃げることも出来ずに、泣いて居るのですぜ、もう貴方には頼まん、初めから警察へ持てゆかなんだが俺《わし》の手落じゃ、警察へ頼みます、帰って下さい」
「そうです、そうすれば貴方の名誉と信用と、それから御希望を砕いてしまうのに一番早道ですね、まあそう怒るものじゃありません。大体御依頼がなくとも此事件は調査しなければならないのです、居所だけでも報告して上げましょう」
「余計なお世話だ、どうせ碌《ろく》なことが判るものか、何一つ頼みませんぞ、若僧に何が出来るかッ」
「そうですか、では御随意に、角《つの》を撓《た》めようとして牛を殺さないように」
「ナニ何ですと」
「イヤお邪魔でしたね渡邊君帰ろう、左様なら」
善兵衛は激怒のあまり、証拠の書類を取戻すことさえ忘れていた。
下 最後の訪問
新田家を辞した春日は、電車通りまでゆくと渡邊には役場へ戸籍と名寄帳《なよせちょう》を写しに行くよう命じておいて、自分は市内でも一流の文
前へ
次へ
全19ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山下 利三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング