聞かされたものです。口振りから察しても蕗子は決してその男を愛していないらしかったのです……)とね。
妙な意地ずくからこんな出鱈目《でたらめ》を申立て、愛する蕗子の死後を涜《けが》して実に彼女に対して申しわけのないことですが、聞いている中谷は見る見る真蒼な顔をして、額に脂汗《あぶらあせ》をにじませ、今にも倒れそうな状態《ありさま》でした。
それを見て私は心の中に非常な満足を覚えましたものの、由《よし》ないことを云ってしまったと後悔しないわけにゆきませんでした。何故ならばそれがため余計に私の弁解が益立《やくだ》たなくなってしまいました。中谷も一旦は調べられましたが素《もと》より狡智《こうち》に長《た》けた彼は巧く云遁《いいのが》れたようです。
種々《いろいろ》審理の末、私はとうとう十二年の宣告を受けてしまいました。
蕗子の死んだことが私の生活にとって致命的な大打撃でした。唯一の憧れであった蕗子が死んでみれば放浪に出ることなんか意義のないことで、免訴になったところで何の生《い》き効《がい》があるでしょう。中谷へ皮肉な復讐から蕗子と特別な交りのあったことを、一般に信じさせてしまった上は
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