う》貰《もらっ》て来ました、勇気《ゆうき》はこれに在りとて大笑《たいしょう》せられたり。
また或時《あるとき》、市中より何か買物《かいもの》をなして帰《かえ》り掛《が》け、鉛筆《えんぴつ》を借り少時《しばらく》計算《けいさん》せらるると思ううち、アヽ面倒《めんどう》だ面倒だとて鉛筆を抛《なげう》ち去らる。
或日、老僕《ろうぼく》、先生の家に至りしに、二三の来客《らいかく》ありて、座敷《ざしき》の真中に摺鉢《すりばち》に鰯《いわし》のぬたを盛《も》り、側《かたわ》らに貧乏徳利《びんぼうとくり》二ツ三ツありたりとて、大《おおい》にその真率《しんそつ》に驚き、帰りて家人《かじん》に告《つ》げたることあり。
先生は白皙《はくせき》長身《ちょうしん》、一見して皆その偉人《いじん》たるを知る。されば先生は常に袴《はかま》をも着せず、一書生《いちしょせい》の風体《ふうたい》なるにかかわらず、予が家の婢僕等《ひぼくら》皆|尊敬《そんけい》して、呼ぶに先生を以てし、門番《もんばん》、先生を見れば俄《にわ》かに衣を纒《まと》いてその裸体《らたい》を蔽《おお》いて礼《れい》を為《な》せり。
先生の親
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